入社してようやく会社の一員として認められてひとりで行動するようになった頃、会話中にふと言葉の使い方で悩むことはありませんか?
契約書や報告書に上司や取引先からハンコをもらう時、あなたはどんな風に言いますか?
「押印お願いします。」
「捺印お願いします。」
どちらもハンコを押すという意味ですよね。
でもどっちが正しいのかイマイチよくわからない・・・「ハンコください」じゃダメなの??
さすがに上司や取引先の方に「ハンコください」は大人としてNGです。社会人になってせっかく仕事に慣れてきても、言葉が子供のままでは会社では生きていけませんよね。
これからあなたが先輩社員として教える立場になった時に、きちんとした言葉で仕事内容を説明できますか?
そんな言葉の使い方に悩んでいる社会人のあなたに、取引先や上司の前で、恥をかかないためにも、今回は「押印」と「捺印」、そして「押捺」の違いについてわかりやすく説明します。
「押印(おういん)」とは?
押印とは、あらかじめ氏名が印刷やゴム印、他人による代筆などで記載されている文書に印を押すことです。
氏名を自筆以外で表記することを「記名」といい、記名してから押印することは「記名押印」という言葉が使われています。
自筆ではないため、法的な証拠能力としては低いので、簡易的な文書によく使われています。
つまり、
- 記名…自筆以外で名前を記入すること(印字や代筆、ゴム印などで表記すること)
- 押印…記名された文書に印を押すこと。
- 記名押印…自筆以外で氏名を表記し印を押すこと
ということですね。
□スポンジ朱肉の正しい押印の仕方
「捺印(なついん)」とは?
捺印とは、直筆の氏名が記載された文書に印を押すことです。
自筆で氏名を書くことを「署名」といい、署名してから印を押すことを「署名捺印」といいます。
こちらは「押印」と違い、自筆で氏名を記入するので本人の筆跡が残ります。そして法的な証拠能力が高くなるため、公的文書や契約書類などの重要度の高い書面で使用されています。
つまり、
署名…自筆で氏名を記入すること
捺印…署名された文書に印を押すこと
署名捺印…自筆で氏名を記入し印を押すこと
ということですね。
当用漢字として「捺印」が使われる場合も
当用漢字というのは日常的に使用される漢字の範囲を定めたもので、「押印」という字がこの当用漢字には当てはまらないため、「捺印」という言葉が使用され始めたという説もあります。
ですから、氏名が自筆ではなくても「捺印」と言っても間違いではないので、ここで曖昧な言葉として使われるようになったとされています。
「押捺(おうなつ)」とは?
押印または捺印に加えて、指紋を押すことを「押捺」と呼びます。
「指紋押捺」という使い方をしますが一般ではあまり指紋を押す機会が少ないため、あまり使われることはありません。
証拠能力の高い順位はこうなります
法的な証拠能力が高い順番は以下の通りです。
署名は筆跡で本人であるかどうかを鑑定することができるため、法的な効力があります。さらに印を押すことによって効力が増します。
ですので、公的文書では署名捺印が一般的に使われています。
ちなみに「押印」「捺印」に使われる印鑑の効力は?
印鑑にも会社実印や角印などたくさん種類がありますが、ここでは社会人に一番身近な個人で使う印鑑について説明しましょう。
社会人が普段使用する印鑑は実印ではなく簡易的なネームスタンプが多いですが、実印とスタンプの証拠能力の違いは法的にはありません。
つまり、どんな印鑑を使っても効力は同じなので、実印だけきちんと管理していれば安全ということではないので注意が必要です。
かといって、重要な場面でネームスタンプを押すとやはり敬遠されることが多いので、きちんと実印で対応してくださいね。
押印と捺印は名前の記載方法で使い方が変わる
何気なく使っている「押印」と「捺印」という単語ですが、実は書かれている氏名によって言い方が変わるんですね。
名前が表記されているところにハンコを押してもらう時は「押印」。
自筆で書かれた名前のところにハンコを押してもらう時は「捺印」。
でも当用漢字として考えると「捺印」の方が一般的。
このように意味をしっかり把握してから言葉を使っていくと、大人としての会話力が上がり仕事にも自信がつきますね。
日本語をキレイに話せる社会人って素敵です。みなさんも明日から「押印」と「捺印」という言葉を使い分けてみてくださいね。
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